PANYO*PANYO 風邪の日(風真編)

灯籠屋へ引っ越ししました

スポンサーサイト
--/--/-- (--) --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
風邪の日(風真編)
2011/05/03 (Tue) 23:06
風邪の日
携帯版HPより移植作品
多少の修正有

**********

【風邪の日*風真編】

「風真ぁ~大丈夫??」

そう言いながらドアを開いたのは赤瞳が印象的な聖明だった。
彼の腕には、氷水の入った桶が抱えられている。
部屋の中に入るとベット横のタンスの上に桶をゆっくり置く。

「頭…痛い…。」

呟くような小さな声で訴える風真。
モゾッと布団から顔を出したと思うと額に手を当て閉じていた目を細めながらも開く。

「風真、手を退けて。冷たいタオルを当てるから。」

聖明はそう言いながらも、腕を捲り、氷水に浸されたタオルを取り出す。
彼が力を入れる度に、タオルからは水が絞り出され、桶の中に水音が響く。
熱のせいだろうが…全ての音が頭に響いて痛い。
そんな痛みを和らげるかのように、額には冷たいタオルが置かれる。

「冷た…。」

額から伝わる温度は、とても心地が良かった。
そんな内心が表情に出たらしく、安心したように聖明は優しく微笑んだ。

「お腹は空いてない?」

そう尋ねながら彼は僕の髪を撫でるように触る。
悔しいことに、こういう時に側にいてくれる聖明の存在は嬉しいと思う。
悪魔に生み出された僕は、家族もなければ記憶もなかった。
愛情なんて知ることもなく…ただ孤独だった。
でも、今は彼がいる。

親のように…兄のような存在。
普段は喧しく、騒々しい、馬鹿なヤブ医者で、どちらかと言うと子供のような人だが…。

いざという時は、頼りになると思う。
ふざけたことも言わなければ、いつものように絡んで来ることもない。
逆に言うと、静か過ぎて調子が狂うのも事実。

真剣に仕事に取組んでいる時の表情と一緒で、静かな彼は時折、無表情だ。
僕の視線に気付くと、いつも微笑んでくれるけど…。
聖明の素は、むしろ静かな時の彼ではないかと思う。

もしかして…冷たくも感じられる聖明が本当の聖明で…
いつもの笑顔は作ったものだとしたら…?

「風真?」

返事のない僕に違和感を感じたのか…聖明は不思議に様子を伺う。

「ん…お腹…空いてるけど…食べたらまた吐きそうな気がするから…いらない…」

熱のせいだ。
こんなくだらないことを考えてしまうのは…。

「大丈夫だよ。私が保証する。もう吐かないよ。」

聖明はニコニコと自信あり気に言う。
どこからその自信が湧いて来るのか…。

僕は風邪の引き始め、吐き気を催しながらも夕食を食べた結果、胃が受け付けず、トイレで吐いてしまった。
それを思い出すとなかなか食べる気にはならない…。

「どこからそんな自信出てくんだよ…あんた…」
「名医ですから。」

僕は力なく溜息をする。

「それに、さっき全部吐いちゃったでしょ?何か胃に入れなきゃ薬を飲めないよ?」
「別にいい…薬嫌いだし。
あんた、名医ならどうにかしろよ…魔法医学専行医師だろ…?
風邪ぐらい魔法で治せないの?」

聖明は一応、魔法医学専行医師なのだから…魔法でどうにか出来るだろう。

「魔法は万能ではないの。
魔法で風邪を治すのではなく魔法で体の免疫力を高めたり…
体内に不足している要素を自然から取り出して…液体にした物を飲んだり…
案外、地道なの。
風邪菌を魔法で殲滅(せんめつ)出来ないこともないけど…おすすめはしないね。
身体が弱っているのに、そんなことしたら風邪が治っても肉体疲労が残っちゃうよ?
肉体が魔法に耐えられないからね。
下手したら、風邪より辛いかもね~。」

風真は目を細めながら、聖明を見つめる。

「な…に?」
「名医もたいしたことないな。」

聖明は横で落ち込みながらも、風真にデコピンをする。

「っ!」
「相変わらず口だけは達者なんだから。」

聖明はクスクスと苦笑する。
あぁ…聖明のこういう笑顔が、案外好きなのかもしれない。

「少し休みなさい。直ぐにお粥と薬を調合してくるから。」
「…いらないって言ってるのに…」

風真は多少むくれながらも呟く。
それを目に聖明は微笑むながら立ち上がる。

「…?風真?」

気付いたら、僕は聖明の服を掴んでいた。
いきなりの行動に、目の前の彼は不思議にそうに僕を見る。
僕自身、自分の行動にビックリしながらも聖明を放さなかった。

「どうしたの?」
「…もう少し…側にいて…。」

僕の精一杯の甘えだった。
聖明はにっこりと微笑むと、先ほどと同じ場所に腰を下ろした。

「甘えん坊だな、風真は。」
「うるさい…!さっさとどっか行け!!!馬鹿!!!」

聖明の言葉で我に帰った僕は…急に恥ずかしくなり、野次を飛ばす。
ただでさえ熱で顔が暑く感じるというのに、更に熱が上がったように感じる。
きっと今の僕は真っ赤な顔をしているのだろう。
そんな表情を隠すように毛布を頭まで被り、背を向ける。

恥ずかしい…っ!

「まったく…どっちなんだい?
ほら、こっち向いてよ~風真ぁ。」

背中を突付きながら僕の名前を呼ぶ彼。
鬱陶しいけど…嫌じゃなかった。

「一緒にいると風邪移るだろ…。」
「名医は風邪引かないんだよ。」

彼は暖かみのある声で、いつものように冗談を言う。
僕は少し間を空けてから、もぞもぞと顔を出し振り返ってみる。
すると目の前には聖明の顔が視界いっぱいに広がっている。
思わずビックリし肩を竦ませる。

「近過ぎるだろ…っ!移っても知らないからな…っ!」
「風真は優しいから看病してくれるよ。きっと♪」

聖明は僕の前髪をサラっと指で触る。

「やっぱり風邪引くんじゃん…。」

聖明は苦笑をすると暫くの間、ただ僕の髪を撫でる続けた。
少し心配そうな表情を見せながら。

「風真の気が済むまでここにいるよ。」
「…馬鹿。」

聖明はベットに座り直すと、枕元に落ちたタオルを取り、風真の額に優しく当てる。
僕は、頭に置かれた心地よい冷たさに、再び目を閉じた。

独りでは辛い風邪も、側にいてくれる人がいるから…たまには良いかもしれない。
そう思えてしまったのは…僕だけ?
その後、僕が寝てしまった後も聖明は朝まで側にいてくれたみたいだ。
椅子に座りながらも僕の横で眠り続ける彼。

ここまでして側にいなくても良かったのに…でも、嬉しかった。
本人には恥ずかしくて…言えないけど…

ありがとう。
僕の横で寝ている彼に小さな声で言ってみた。

* 聖明編に続く *
スポンサーサイト
パニョ日記(聖明編) | HOME | 風邪の日(聖明編)
Secret
トラックバック
TrackBackURL
→http://panyonikki.blog129.fc2.com/tb.php/157-f9b658e7

灯夜 雪(Touya Yuki)

灯夜 雪(Touya Yuki)
フリーイラストレーター

可愛いものが大好きよ
珈琲が好きで勉強中☆
ネカマに間違われやすい

COUNTER:

06 | 2017/07 | 08

sun

mon

tue

wed

thu

fri

sat

- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
Illustration
Comic
Novel
創作
ランチタイム 
+パニョ日記
1 / 2 / 3
+風邪の日
1 / 2

携帯用HP+ ENTER

pany0_pany0 + yahoo.co.jp 
(+→@)

無断転載・複製禁止
(C) Copyright TouyaYuki. All rights reserved

ディスプレイサイズ
1024*768px以上推奨
CSS&FRAE使用
This site is JAPANESE TEXT only.


FC2 Blog Ranking

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。